変な奴だ、と思う。
アマディスは隣で書き物をするセリオを横目で見た。
「あの事」は全部話した。宿の亭主にさえ真実をねじまげて伝えたことも、全部正直に。
そして、セリオ自身が同じ目に遭う可能性だってあると言った。
それなのに……
アマディスは、布団をかき寄せ目を閉じる。
小さな寒い部屋の真ん中。百年の常盤木亭は凄く古い建物で、隙間風がビュウビュウ吹き込む。北向きの窓から見えるのは灰色の寒空。無論、暖炉など無い。
二人は薄い敷物の上に座り、布団をかぶり体を寄せ合って温まっていた。
(なんで…?)
アマディスはセリオの神経が理解できなかった。
吸血鬼と一緒に過ごすだなんて。
捕食者と獲物の関係。いつ喰われてもおかしくない。
こいつは、死が怖くないのか?
ふとセリオが顔を上げ、アマディスを見る。
「……あんた、体調悪いのか?」
……心配された。アマディスは首を横に振って否定する。
自分の体調の悪い事も、その理由も分かっていたけれど。
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